
胃カメラと鎮静剤の話。
初めて胃カメラを受けたのは10年以上前、会社の健康診断でのことでした。喉にプシュッと簡単な麻酔をしただけで、結構太い管が食道の中に入っていき、苦しいのなんの。。。
その時は何も指摘されなかったのですが、それから毎年胃カメラ検査を受け続けて数年後に逆流性食道炎を指摘されました。その時の検査時間が、炎症のある部分を撮影していたからなのか、やたら時間がかったのを覚えています。さらにその翌年、すでに逆流性食道炎だと分かっているから詳しくチェックしているのでしょう。とにかく胃カメラの検査が長いのです。さらにその翌年も、その翌年も。。。あくまで体感ですが、毎年長くなっていく気がする。当然ながら、苦しむ時間が長くなるわけです。
なんとかならないものかと思っていたら「鎮静剤を使って半分寝たような状態で受ける胃カメラ検査がある」とのこと。翌年の検査の時期に受けてみたところ大きな苦しみもなく検査が終わったため驚いた記憶があります(苦痛の程度は人によって異なるのでご注意ください)。
胃カメラの歴史
胃カメラの歴史は意外なほど古く、内視鏡で世界の7割のシェアを持つオリンパスのHPには、その歴史が詳しく説明されています。
初めて生きている人間の胃のなかをのぞき見たのはドイツの医師クスマウル(Kussmaul)です。1868年、日本の明治元年にあたります。長さ47センチ、直径13ミリのまっすぐな金属管をつかい、剣を呑みこむ大道芸人で試みました。 (オリンパス内視鏡の歴史より)
「真っ直ぐな金属管を飲み込む」という記述、考えるだけで恐ろしいですが。。。その後ドイツで胃カメラの開発が続けられたものの実用化は不可能だったそうです。
日本では戦後まもない1949年(昭和24)年、東大の医師が現在のオリンパスに「患者の胃のなかを写して見るカメラをつくってほしい」という依頼をしたことをきっかけに胃カメラ開発が始まり、翌1950年に試作1号機が生み出されました。同HPにはこう説明されています。
翌1950年、言葉では言い尽くせない苦難のなかから生まれた試作1号機は、本体軟性管の先端に撮影レンズがあり、フィルムは白黒で幅6ミリ、手許の操作で豆ランプをフラッシュさせて撮影し、ワイヤーで引っぱってフィルムを巻き上げるものでした。 (オリンパス内視鏡の歴史より)
白黒フィルム、豆ランプ、など時代を感じさせる単語が並んでいて、苦労のほどが伺える記述になっています。
その後次々と改善が重ねられて現在では「ハイビジョン内視鏡システム」が導入され、検査の精度向上に役立っているとのこと。私が受けている胃カメラ検査がどの機器を使っているのかは分かりませんが、検査後に食道の患部の写真を見ながら説明してくれるので「ここに逆流性食道炎がある」というのが視覚的に分かります。検査が終わってすぐに写真付きで患部の状態を見ることができるのは、考えてみたらものすごい技術の進歩だと思います。
こちらのHP、内視鏡についての情報が豊富でとてもここでは紹介しきれないので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
鎮静剤で苦しさを軽減
内視鏡で逆流性食道炎などの病気を発見し、病状を確認できるようになったことは素晴らしい。しかし、個人的には鎮静剤による苦痛の軽減が気になるところです。
内視鏡検査において、鎮静剤がいつから用いられるようになったのかははっきり分かってはいませんが、日本消化器内視鏡学会が2013年にまとめた内視鏡診療における鎮静に関するガイドラインに「近年、内視鏡診療における鎮静の需要が増加傾向にある」という記述が見られます。
この記述から考えると「鎮静剤を使って患者の苦痛を軽減する」という検査方法が普及したのは比較的最近のことのようですが、ガイドラインはこの7年後(2020年)に改定された第2版を発表しています。鎮静剤を用いた内視鏡検査が一般的になり、より安全な検査のための指標が必要とされていることが伺えます(内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版))。
私が子供の頃は、周囲の大人が「胃カメラ苦しいから受けたくないんだよなあ」とぼやいているのをよく聞いたものですが、近年はそのようなセリフもほとんど聞かなくなりました。鎮静剤を使用した日は自転車や車の運転が制限される場合があるなど、当日の行動に制限が出る点には注意が必要ですが、個人的には、内視鏡検査への抵抗が減り、定期的な検査で逆流性食道炎の症状を確認することができるようになったのは、鎮静剤のおかげだと思っています。
まとめ
逆流性食道炎の診断に不可欠な上部内視鏡=胃カメラの歴史を(ごく簡単に)まとめました。ご興味のある方はリンク先の記事も読んでいただくとより理解が深まるかと思います。
かつて内視鏡検査を敬遠する大きな理由の1つだった「検査時の苦痛」が、鎮静剤の使用によって軽減できることは、逆流性食道炎に悩む私にとっては大きな転機となりました。苦痛に悩むことなく積極的に検査を受け、病状を早期に把握できるようになったことは、患者にとって強力なメリットだと思います。
胃カメラ・鎮静剤はいずれも医療行為であり、稀ながらリスクを伴う場合があります。胃カメラ検査や鎮静剤を使用するかどうかは医師と相談の上で決めることになりますが、苦痛を理由に検査を先延ばしにしている方は、一度医師に相談してみてはいかがでしょうか。
日本における内視鏡開発の悪戦苦闘の様子は様々なドキュメンタリーや小説で取り上げられていて、なかなかドラマチックな話のようです。これについては別の記事で取り上げたいと思っています。