
寝る前3時間ルールの話。
「食べてから3時間以上は寝ないようにしてください」。
逆流性食道炎に悩む人であれば一度は耳にしたことのあるであろうこのルール。
- 食べたものの消化が終わって胃酸が出なくなるまでに大体3時間
- それまでは胃酸が活発に分泌されて食事の消化を行っている
- なのでそれ以前に横になってしまうと胃酸が食道に流れ出て、逆流性食道炎の症状が出てしまう
という理屈です。
逆流性食道炎の経験者の意見
私の経験に照らし合わせると、この3時間ルールは逆流予防においてとても重要です。それは間違いない。一方で「3時間経ったからもう寝てもいいぜー」と油断して布団に入って、翌朝胸焼けとともに嫌な気分で目を覚ました経験は何度もあります。
「3時間経ったらいいんじゃなかったの?」と胸をさすりながら文句の一つも言いたくなりますが、これは家族も友人も誰も悪いわけではないので、自分で知識をつけて予防するしかないのが現実。というわけで、この記事では逆流性食道炎3時間ルールについて考えてみようと思います。
3時間ルールの根拠
3時間というのはなんとなく言われている数字ではなく、医学論文でも示された数字です(参考1, 2)。日本消化器病学会のガイドラインではこれらの論文に基づいて「遅い夕食では、就寝中の酸逆流が有意に多いと報告されている。本邦からの報告でも、就寝前3時間以内に夕食をとることは、4時間以上開ける場合に比べGERDの危険因子であることが示されている」とされています(出典: 日本消化器病学会「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021」)。
しかし、消化が終わるまでの時間は個人差がありますし、食べた量によっても当然変わってきます。さらに言えば、夕食に消化によいお粥を食べた場合と、こってりしたステーキや中華料理などを大量に食べた場合とを一括りにして考えるのも乱暴な話です。
「夕食に脂っこい料理を食べて、アルコールをたくさん飲んで、ケーキなど食後のデザートまで食べてお腹いっぱいになったけど、魔法の3時間ルールを守れば絶対に大丈夫っす」なんてことはないですよ、というのが私の意見です。
さきほどのガイドラインでも、厳密には3時間でOKとは書いてないところも重要です。
美味しいもの = 消化に時間がかかるもの
食事の脂、アルコール、ケーキの生クリームやバターなど、私たちが一般的に美味しいと感じるものは、その多くが胃酸逆流を誘発し得るといってよいと思います。これら1つ1つは消化に時間がかかるものばかり。胃酸がたくさん分泌されて、逆流を防ぐ下部食道括約筋がゆるんでしまいます。さらに、複数の胃酸逆流因子を一度に胃に送り込むことで、個別に摂取するよりもずっと消化に時間がかかります。
ある程度以上の年齢で、夕食に脂っこい料理、アルコール、ケーキなどをたくさん食べれば、たとえ逆流性食道炎ではなくても、たとえ寝るまでに3時間あけたとしても胸焼けしてしまう人は多いのではないでしょうか。
そんなメニューを私のような人間が飲食すれば、そりゃあ3時間ルール程度で胃酸逆流は防げないよね、と思ってしまうのです。
美味しいものはランチで食べる
「じゃあもう美味しいものは食べられないのか」と悲観してしまいそうになりますが、工夫のしようはいくらでもあります。私の場合心がけているのは、上の見出しの通り。場合によってはモーニングも選択肢に入れています。胃酸逆流因子を飲食してしまっても、横になるまでの時間をできるだけ長くして症状を抑えようという作戦です。
私は家族や友人との食事は夜が多かったのですが、このところはランチに切り替えることがかなり増えました。先日は少し高級なホテルのランチに行ったのですが、夜飲みに行くことに比べたらずっとリーズナブルで、それでいてメニューは豪華でとても満足でした。アルコールも飲まないので健康的。
ただし、危険因子を大量にとった場合は横にならなくても症状は出ますので、寝るまでに時間があるから大丈夫と油断はしないようにしたいところです。
まとめ
寝る前3時間ルールは、万能の魔法ではありません。3時間さえ守れば何を食べてもいいというわけではなく、夕食の内容や量が症状の出やすさに大きく影響します。
私自身が行き着いた結論は「3時間ルールを守りつつ、その日の食事内容に応じて柔軟に対応する」ということです。脂っこいものをたくさん食べた日は3時間では足りないかもしれない、という意識を持つだけでも、翌朝の不快感を減らせる可能性は高まります。
完全に症状をゼロにするのが難しい場合でも、危険因子を一つひとつ減らして症状を軽くすることはできると思います。こうして美味しいものを楽しみながらうまく付き合っていくというのが、たくさんの痛い目を見てきた私のたどり着いた結論です。
参考
英語で専門用語も多いですが、具体的に書かれていて面白いです。ご興味のある方はぜひ。